アイ・ウェイウェイ展/森美術館
2009年9月26日

 高層ビルというのがどうも好きになれません。ほんの数年前まで、○○は高い所に登りたがるという話し通り、私は自分自身が高い所を好んでいると思い込んでいました。しかしあるとき、ほんのちょっとしたことから、自分が高所恐怖症であることに気づいてしまったのです。

 ほんのちょっとしたことというのは3メートルほどの高さのタンクの上に立つという出来事でした。それまで自分が高所恐怖症であるという自覚がまったくなかった私は、ひょいひょいっと何も考えずにタンクに登りました。で、タンクの上にすっくと立ったまではよかったのですが、どういうわけか背中がぞくぞくします。たかが3メートルなのに下を見るといたたまれない気持ちになり、説明員の話をいい加減に聞き流して、結局すぐに下へ降りてしまいました。地面に足がついた瞬間、どんなにホッとしたことか。「あれ、もしかするとこれって高所恐怖症じゃないの」と、そのとき初めて知ったわけです。

 アイ・ウェイウェイ展が開かれている森美術館は、六本木ヒルズ森タワー(上の写真参照)の53階にあります。いくら高所恐怖症とは言え、建物の中にいる限りは何ら問題ないのですが、写真のようにビルを下から見上げるのも、あまり気持ちのいいものではありません。そこでできるだけ上を見ないようにしながら素早くビル内に入りました。できれば美術館は高層ビルの中ではなく、低い所につくって欲しいものです。

 でも中に入ってしまえばこっちのもの。2階(?)のチケット売り場でチケットを購入し、53階へと上がっていきます。

 森美術館を訪れるのは今回が初めて。やはり案内カウンターやクロークなどは、公営の美術館と較べるとあか抜けた感じがします。

 案内カウンターで、無料の音声ガイドを借りて、アイ・ウェイウェイ展の鑑賞開始です。嬉しいことにこのアイ・ウェイウェイ展は自由に撮影することができます。

 以下、気になった作品をいくつか紹介します。

蛇の天井〈Snake Ceiling〉2009年
2008年5月12日に起きた四川大地震では、約9万人の死者・行方不明者が報告されています。校舎の倒壊により学校で亡くなった子どもも多く、この作品はその子どもたちへの鎮魂歌として制作したもの。通学用バックパックをつなげて蛇を形作っています。
平行棒〈Kippe〉2006年
器械体操に使われる平行棒と薪材を組み合わせた作品。文化大革命の時代、中国の学校には必ずあったという平行棒(どうりで体操が強くなるわけだ)と少年期に得意だった薪積みの思い出が重なってできた作品ということです。
中国の丸太〈China Log〉2005年
明時代の寺院で使われていた8本の柱を組木の技法で組み、中心を中国の地図の形にくり貫いた作品(フラッシュをたけないので、くり貫いた部分が写りませんでした Orz)。
中国の地図〈Map of China〉2008年
釘を使わず組木の技法で木を組み合わせてつくった中国の地図(上から見ると中国の地図の形をしています。脚立がなかったので上から撮ることができませんでした Orz)。
月の箪笥〈Moon Chest〉2008年
高さ3メートルを超す丸い穴を開けた四角い箱を、まっすぐに並べた作品。箱の周囲を回って穴を見る位置を変えると、穴の位置がずれ月の満ち欠けのように見えます。
漢時代の壺を落とす〈Dropping a Han Dynasty Urn〉1995年
「漢時代の壺を躊躇なく落として壊す」というだけの3枚の組み写真(上の写真は3枚目)。登場しているのはアイ・ウェイウェイ自身。
彩色された壺〈Colored Vases〉2008年
新石器時代の壺を、工業用塗料で彩色してしまうという作品。
断片〈Fragments〉2005年
明清時代の骨董家具や中国南部の取り壊された寺院の柱や梁から立体作品をつくり、さらにその際余った廃材(断片)からつくられたという作品。複雑な形をしているこの作品も、組木の技法でつくられている。

 正直言って、たいへん面白い展示でした。全体的にわかりやすいというか、考えやすい展示だったというのが展覧会を見ての感想です。音声ガイドでは、作家自身の作品に対する考え方なども聞くことができます。それを聞いているとこの作家のひとつひとつの作品に対する考え方が非常に明確だということがわかります。

 自分が何を表現したいか、何を伝えたいかということが自分の中で明白になっていないために、曖昧な作品しかつくれないアーティストには、今回の展覧会は参考になるのではないでしょうか。このアイ・ウェイウェイの表現方法も現代アートのひとつの方向として、チェックしておく必要があると感じました。

2009年10月8日(木)