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オルセー美術館展2010「ポスト印象派」

ルソー《蛇使いの女》の画像

 19世紀美術の殿堂であるフランス「オルセー美術館」が、2009年10月から大規模な改装工事に入り、そのおかげで数多くの傑作を一度に楽しめるというなんとも贅沢な展覧会「オルセー美術館展2010」が日本にもやってきました。

 量的にも質的にも十分満足のいく内容となっていますから、ただひたすら名画の実物を楽しむというのもいいかもしれません。でも、正直言ってそれでは少々もったいないという方もいることでしょう。そこでここでは、事前に知っておけば展覧会を「もうちょっと余分に楽しめますよ」という情報を少しだけ書いておくことにします。
 すでに展覧会をご覧になってしまった方には無用かと思いますが、これから見に行こうとお考えの方は参考程度にお読みください。

 主催者によると本展は、「ポスト印象派」の時代に着目した展覧会ということです。

 展覧会では、19世紀末フランス……そこで印象派がもたらした絵画の刷新に反応し、豊かな才能を開花させたセザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、スーラら「ポスト印象派」と呼ばれる画家たちに焦点を当て、彼らの表現に対する多彩で魅力溢れる挑戦の数々を見て取ることができます。

 展覧会冒頭の第1章では、モネを中心に印象派の優れた作品も数点見ることができます。しかし、本展において印象派はあくまでも前座に過ぎないと認識したほうが得策です。

モネの《睡蓮の池、緑のハーモニー》の画像

 なぜなら、モネの《睡蓮の池、緑のハーモニー(上図)》や《日傘の女性》など、素晴らしい作品があるからといって、その印象を引きずってしまうと本展の本当の面白さを見失うことになるからです。

 本展の面白さはあくまでも印象派以降、たがが外れたように出現した、新しい多様な芸術表現に対する挑戦の数々を見る点にあります。

 スーラ、セザンヌ、ドニ、ゴッホ、ゴーギャン・・・・。
 展覧会を通して、彼らが新しい独自の芸術表現を見つけようと悪戦苦闘する様が手に取るように感じられます。

 でもなぜ、印象派以降このような多様な芸術表現が出現したのか。それを理解するためには時代背景を知る必要があります。

 当時フランスの官展(サロン)では、写実的な表現技術がほぼ行きつくところまで行き、若手画家の多くは何度チャレンジしてもサロンで認められることがかなわない状態に置かれていました。一方では、見ているものをそのまま、いとも簡単に写し取ることができる写真技術も出現していました。

 そう、この時代の若手画家たちにとっては、技術を磨いて写実的に美しく描くことがすでに何の意味もなさなかったわけです。

 また、芸術を巡る状況も大きく変化していました。長く王侯貴族、富豪のものであった芸術は、急速に大衆文化にのみ込まれつつありました。
 大衆は飽きっぽく、貪欲です。
 その大衆に認められるためにも、新しい自分だけの絵画表現の確率は画家にとって必要不可欠なものでした。

 印象派以降多くの芸術家は、時代の要請に突き動かされて新たな表現技術を探し求めました。その試行錯誤、努力、成果の一部を概観することができるのが「オルセー美術館展2010」です。

 かなり混雑しているようですが、比較的空いていると思われる平日の午後早めあたりに、ゆっくり鑑賞したい展覧会です。

2010年7月13日(火)
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