


記者発表の中で展覧会の監修者である三浦篤氏(東京大学教授)から、本展の主旨について説明がありました。
それによると「フランス絵画の19世紀展」の狙いは3点あるということです。以下概略をまとめておきます。
1.フランス近代絵画をいままでとは別の角度から捉える
19世紀のフランス絵画について語る場合、とかく印象主義絵画にばかり注目が集まりがちです。しかし当時のフランス美術界で主流を成していたのはアカデミズム絵画であったことはよく知られています。ところがそのアカデミズム絵画を中心とした展覧会は、いままでほとんど開かれてきませんでした。
アカデミズム絵画は、神話や歴史に基づいた物語性を持ち、その多くは「愛と死」という普遍的なテーマを描きだしています。
また、数多くの極めて美しい裸体画が描かれたことも見逃すことはできません。
作品のサイズは概して大きく、当時の画家たちは非常に高い技術を駆使して、その大画面の中に愛と死、人の裸体の美しさを描きだしていたわけです。
19世紀のフランスでは、上記のような特徴を持つアカデミズム絵画が主流であったのに、いつのまにか脇役という地位に貶(おとし)められてしまいました。そのアカデミズム絵画を、主流であった当時そのままの視点で展示する。それが第1の狙いということです。

2.アカデミズムと印象主義を対比させる
前述したようにアカデミズム絵画を主役として取り上げた展覧会は、これまでほとんどありませんでしたが、印象主義の画家を中心としたフランスの19世紀絵画の展覧会は非常に数多く開かれてきました。アカデミズム絵画も、そのような展覧会の中ではしばしば取り上げられています。ただしほとんどの場合それは、印象主義と対立する保守的な勢力、つまり敵役としてでした。
今回はまったく反対に19世紀当時の価値観そのままに展示、再現しています。そうすることにより、現実の19世紀の価値観を知った上でアカデミズム絵画と印象主義絵画を見直すことができると考えたためです。それにより、いままでとは異なる感覚で印象主義とアカデミズムを対比することができるはずというのが第2の狙いです。
3.日本近代洋画との関係
日本の近代洋画界には、1878年のパリ万国博覧会を機に渡仏した山本芳翠を起点とした、フランスで油絵を学んで帰国する画家(黒田清輝、久米桂一郎など)たちの確固たる系譜が形作られてきました。
その彼らが師として選んだのが、今回「フランス絵画の19世紀展」で展示されている作品を描いた画家たちです(山本芳翠はジャン=レオン・ジェロームに、黒田清輝、久米桂一郎らはラファエル・コランに師事しました)。
このように日本近代洋画は、19世紀後半フランスのアカデミズム絵画を模範としながら出発しており、その関係を明白にすることが第3の狙いです。
本稿は、記者発表の際に三浦篤氏が話した内容と展覧会図録後半に掲載されている氏の論考「19世紀フランスのアカデミスム絵画と日本近代洋画家たち」をもとに、公共情報センター・福地がまとめたものです。